でっかいのが好き






ちっちゃい者はでっかいものが好きなんです。


でっかいのが好き



 寿司屋を出ると、外は土砂降り。さすが尾鷲。日本一降水量の多い町。(たぶん。)


「どうして尾鷲でよく雨が降るのかなあ。」


というくろさんの問いに



「暖かい海流で温められた空気が、熊野の山にぶつかって急激に冷えるからじゃないの。」


と答えたら


「・・・つまらん。」


と言われた。すごくがんばった回答なのに・・。 



 理由はともかく、あまり降水量が多いと閉鎖される道が多いと聞いたので、土砂降りの中本日の宿泊地、勝浦へ向かって走る。本当は熊野古道を散策する予定だったけれど、この雨じゃあ散策どころじゃない。ワイパーを全開で動かしてひたすら走るのみ。ちょっと怖い。



 ところが、尾鷲市を過ぎ、山を越えたらあっという間に雨が止んだ。さすが尾鷲。日本一降水量の多い町はダテじゃない。



 これまでの山間の道から前がすっと開けて海が見える。ここからは海を左手に見ながら進んでいくことになるらしい。熊の古道は世界遺産の暫定リストに入っているとかで、道のあちこちに看板が出ていて初めてでも分かりやすい。海を眺めながらドライブを楽しんでいると、海がめ公園という魅力的な名前の道の駅を発見。眠気覚ましに入ってみることにした。



 公園の入り口にはブロンズ(?)で出来た海がめがいた。頭部分はいろんな人に触られているらしくピカピカ。家族が子どもを亀の背に乗せて写真を撮っている。公園内部には亀とウサギの子ども用の乗り物があって、そこでも子どもの写真を撮っている。トイレやみやげ物を売っている建物の横には、水槽があって、本物の海がめがいた。


「・・・でかい。」



 海がめ、すごいです。これなら背中に乗って竜宮上まで行けます。ケータイのカメラで撮ろうとしてもでかすぎてなかなか画面に入りません。でっかい好きな自分は思わず口を開けて見入ってしまった。



 海がめを堪能した後は那智速玉大社へ。ここは熊野3社のうちの1つ。全国に数千(!)ある熊野神社の総本宮らしい。イザナギ、イザナミの尊を祀っている。神社の中には歴代天皇の行幸記念碑が建ち、多くの人の信仰を集めていたことが分かる。特に、伊勢神宮が天皇家(日本国?)の神社としてある時までは一般の人の参拝が禁止されていたのに対して、ここは庶民も参拝できたため、全国から人が集まったらしい。こんなに有名な神社なのに、さすが紀伊半島。人もまばらで見学しやすかった。



 速玉神社の次は那智の滝へ。何を隠そう、滝好きの私はここを凄く楽しみにしていたのだ。那智の滝は高さが日本一らしい。(たぶん。)駐車場に車を停め、石段を下る。どんどん下る。帰りがちょっと心配になるくらい下る。足元が悪いからずっと下を見て下っていたけれど、一番下までたどり着いて顔を上げたら、


「・・・!」


滝が見えた!



そりゃ、ナイアガラやイグアスの滝みたいに迫力はないけれど、高い崖から細く落ちる水は正に白糸。優美ってこういう滝を言うのね。ああ、また口が開いちゃう。滝つぼ近くに祠があったけれど、この滝に神様がいるって思った人の気持ちが分かるわ。



 滝に圧倒された滝好きの私はぼうっとしたまま紀伊勝浦の温泉へ。ちょっと、待った!今夜のお酒が買ってない!!!でっかいもの好きだけど、滝好きだけど、それよりもっと酒が好きなの。買わなきゃ、お酒。



 目標地点を旅館から酒屋に変更し、勝浦の町をぐるぐる巡る。勝浦の駅近くに酒屋を発見。悩んだ末、「那智の滝」という地酒と「くまのビール」という地ビールを購入。この地ビール、珍しいことにラガーだ。つまみに小さなあたりめも買い、ようやく旅館へ。



 部屋に案内され、まずはお風呂。露天風呂って確かに屋根はないけれど、壁が高くて圧迫感が凄いところがあるけれど、ここの旅館は海に向かって建っているため(見られる心配がないから?)、露天風呂も壁が低くて気持ちいい。お風呂は「滝見の湯」と言い、案内板によると那智の滝が見えるらしい。が、この日は既に夕方近く。少し曇っていたこともあって、どこが滝なのかぜんぜん分からない。それでもあきらめきれずに身を乗り出していたら、突然空が光り、大きな音が!



 か、かみなり?!雷が鳴っている時に露天は怖いよね。いや、でもすぐ止むかもしれないし・・。願いは虚しく雷はどんどん近くなってきたのであきらめて風呂から上がる。部屋に戻る途中、エレベーターが混んでいそうだったので、階段を上がっているとまた大きな音がして直後に電気が消えた。停電だ。停電なんて久しく経験してないや。エレベーターに乗ってなくて良かった。部屋に帰っても電気はつかない。窓際はまだ明るかったので光に吸い寄せられる蛾のごとく窓際に寄る。机の上には夕飯の配膳が途中のまま。この状態が20分程続いただろうか、何の前触れもなく電気がついた。まだ外が明るかったから良かったけれど、夜だったらどうしようもなかっただろうな。良かった。



 仲居さんも戻ってきて、夕食が始まった。夕食は旅館料理だけあって量が多い。刺身(これは尾鷲の寿司屋の方が断然おいしかった。)、天ぷら、イセエビのバター焼き、車えびの塩焼き(なぜ海老が2種類?)、蒸し物、茶碗蒸し(これもかぶっている。)、などなど。買ってきたくまのビールを内緒で飲みながら(これはうまかった。)幸せな気持ちになりました。明日は白浜で動物三昧。今日は世界不思議発見を見て、早目にお休みします。


(この後、くろさんは一人でラーメンを食べに行きました。だから太るんだよ。)







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